令和五年六月九日、川口由一さんが亡くなった。
まきさんの涙は美しく、清く、綺麗だった。
川口さんのお顔は凛々しく、勇ましく。
もうこの世界にぬくもりを溶かしつくした身体は、何よりも冷たくて、もうこの身体の中に川口さんはいないと分かる。どこに行ったのだろうか。
身体は形としてこの世界にとどまっていた。
お姿を見ても、想いに言葉は見つけられず、側にいたまきさんを見ることしかできなかった。まきさんは大きく頷きながら、私を見てくれた。私の想いを全てわかったと仰るような、柔らかな、優しい目で私を見てくれた。
それでもう十分だった。
この想いに言葉が見つかりません。
人の死を再び目の当たりにする。
人は死ぬけれど、私も死ぬけれど、死ぬまで生き抜くことが難しいと感じることもある。
苦しくて辛いのか、それとも喜びなのか、可能性なのか…
最後まで生きることの苦しみを見せてくれた気がした。生きることってそんなに辛いんだ。生きる意味ってあるのかな、そんなに苦しむ意味ってあるのかな。分からないよ。
無明の世界から抜け出せなくて、何に苦しいのか分からない時もある。
それでも今は、川口さんの温かな想いを感じる田畑で、皆んなの姿を見ながら学び、言葉を交わしながら同じ時を過ごせることが本当にしあわせで、私にとって大切で、ありがとうの気持ちでいっぱい。
出会ってくれて、生きていて下さって、ありがとうございました。